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「糖尿病治療で食事療法が大切なのはどうして?」

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こんにちは、船山内科の船山です。
患者さんからよくあるご質問についてお答えしていくシリーズです。今回は食事療法が大切な理由について。食事療法は、運動療法・薬物療法と並んで糖尿病の三大療法のひとつであり、治療の根幹とも言えます。

食事をすると、体内で炭水化物が分解・吸収されてブドウ糖になり血流に流れ込みます。健常な人では血糖増加に応答し、膵臓からのインスリン分泌が迅速に行われ一定範囲の正常血糖を維持できます。

耐糖能異常や糖尿病の方の場合には、体内でインスリンが十分に分泌されなかったり、インスリンを効果的に使用できなかったりすることで、血糖値が高くなることがあります。糖尿病の食事療法では、食事の摂取量やタイミングを調整し、血糖値を目標範囲内に保つことを目標とします。

糖尿病の食事療法は血糖コントロール改善を介して、合併症リスクを低減することが期待されます。また他の代謝疾患や高血圧の発症・重症化予防のためにも重要な役割を果たします。

食事療法は、これまで馴染みの深かった生活習慣を変更することです。負担が大きく、確実性高く実施するのはなかなか難しいのが実情です。大切なのは、個々の状況に応じて適切なアプローチを専門医・管理栄養士と相談することです。

運動療法と食事療法の併用

糖尿病の治療としては食事療法と並んで運動療法があります。食事療法と運動療法を含む生活習慣指導は治療のどの段階でも必要で、繰り返し指導を受けることが推奨されています。

①薬物療法が追加されるとき

HbA1cなどの目標到達が不十分な際には、生活習慣の指導に加えて薬物治療の追加を検討していきます。定期通院で、再度コントロールが悪化する際には生活習慣など糖尿病教育をしてさらに薬物療法を追加という繰り返しを実践していきます。

②生活習慣指導の頻度が心筋梗塞や死亡率などに関連

糖尿病患者に対してのライフスタイルカウンセリング頻度は心血管イベントおよび死亡の発生率減少に関連するかを調べた報告があります。
(Diabetes Care 2019;42:1833–1836)

生活習慣指導の頻度を上げると合併症・死亡を抑制できる可能性が示唆された内容です。HbA 1c ≧7.0% のコントロールが十分ではない糖尿病の成人(18歳以上)のコホート研究で、心血管イベント(心筋梗塞,脳卒中,狭心症による入院)または何らかの原因による死亡の最初の状態に至るまでの期間を複合主要アウトカムはとして評価しました。

19,293人の研究患者のベースラインHbA 1cの中央値は7.8%で、初めの2年間でのライフスタイルカウンセリングの頻度中央値は一か月あたり0.46回でした。初めの2年間の評価期間中にHbA 1c についてはライフスタイルカウンセリングの頻度が月1回以上を受けた場合では1.8%減少でしたが、月1回未満の場合ではわずか0.7%のみの減少でした。

  • 2年間の評価期間終了後に平均5.4年間の追跡調査
  • 心血管イベント(心筋梗塞,脳卒中,狭心症による入院)または何らかの原因による死亡の累積発生率を調査
  • 初めの2年間のライフスタイル指導頻度月1回以上で33.0%月1回未満では38.1%

指導頻度が多いとヘモグロビンA1C低下のみならず心血管イベントおよび死亡に対しても抑制的になることが示されました。ライフスタイル指導回数が多かった場合は心血管イベントや死亡の累積発症率が抑制的で、生活習慣指導のわずかな差が大きな差になっていた可能性があります。

③個々の状況にあった指導を受けられる医療機関受診を

なお、生活習慣の指導といっても非常に多様です。糖尿病の方が受診する際にはバリエーションが豊富で十分な指導体制を備えた医療機関への受診をお勧めします。

食事療法の主な役割

糖尿病における食事療法の主な役割は2つあります。高血糖の継続を避けることと合併症を防ぐことです。


①血糖コントロールを助け、高血糖状態の継続を予防

高血糖が続くと、糖尿病性合併症(網膜症、腎症、神経障害など)の危険性が高まります。特に肥満を伴った青年期~壮年期の2型糖尿病を有している方に対する適正な摂取エネルギー量の是正などの食事療法により、血糖値の改善を介して合併症の発症や進展を抑制することが期待されます。
具体的な食習慣の改善としては食べ過ぎや偏食を避け、規則正しい食事をすることなどが必要になってきます。

②高血圧や高脂血症などの発症と進展を予防

塩分や飽和脂肪の制限食物繊維の確保などにより、高血圧や高脂血症などの合併症が発症することや進展することを防ぐことが期待されます。

つまり、食事療法は血糖コントロールと合併症予防を目的とした適切な食品選択と摂取量の調整、良好な食習慣の確立が重要な役割となります。その他に炭水化物に加えて、タンパク質、食物繊維、健康的な脂肪をバランスよく摂取することが大切です。食物繊維を多く含む食品を食べると、ブドウ糖の吸収が緩やかになり、血糖値の上昇を抑えることが期待できます。
習慣的過量飲酒、高脂肪食・加工食品・果糖飲料を継続的に摂取することはお勧めできません。

食事療法の課題

これまで糖尿病は食事療法においてはエネルギー摂取制限が主たる指導となっていました。
しかしエネルギー制限が主に有用であることが実証されている対象は肥満を合併し、体重減少が必要な2型糖尿病のみでした。日本人を含む東アジア人に多い非肥満2型糖尿病や高齢者2型糖尿病についてのエネルギー制限の効果や意義はまだ十分に明らかにはなっていません

さらに近年、高齢者においては体格指数の高い人、つまり軽度肥満の人は標準(普通)体格よりも死亡率が高いことが示されており、『高齢者世代の方々にとっては必ずしも減量が有用(健康的)なものではないであろう』とするコンセンサスが得られつつあります。

我々は専門医療機関として食事療法でのエネルギー制限がどれほど必要か見極めながら診察で評価し、食事療法の在り方・取り組み方を提案するのみならず、運動療法のご提案、目標HbA1cの決定、治療薬のご提案などをしています。

そのほかにも下記のような要因により食事療法の実施が困難となる可能性があります。

  • コンプライアンス:厳格な食事療法を守ることは難しい場合がある
  • 個人的な嗜好:食事療法が好みに合わないことがある
  • 文化的・社会的要因:文化や家族の食習慣が影響
  • 費用:健康的な食品が高価になる場合がある
  • 栄養の欠乏:制限的な食事療法で特定の栄養素が不足する可能性
  • 研究内容やエビデンスが十分ではない:
    食事療法に関する研究は長期間の観察や介入が困難であることも多く、食事療法の中には、その有効性を裏付ける十分なエビデンスがないものもあり、医療従事者が自信を持って推奨することが困難な場合もある
  • 心理的要因:
    患者さんによっては、大食症や摂食障害など食事療法の心理的側面に悩まされ、アドヒアランスの難しさにつながる場合がある
  • 認識不足:本人は過量でないと認識していても、問診や栄養相談で明らかに過量摂取となっている間食・飲酒・果糖飲料・食事などが判明することがある

食事療法は全員が容易に実施できるものではないかもしれませんが、日本糖尿病のガイドラインには以下のようなことが記載されています。


糖尿病の管理に食事療法は有効か?

糖尿病の管理には,食事療法を中心とする生活習慣の是正が有効である

食事療法の実践にあたっての管理栄養士による指導は有効か?

食事療法の実践にあたって,管理栄養士による指導が有効である

これらを踏まえると糖尿病治療において管理栄養士による栄養指導を受けることが推奨されます。

管理栄養士の役割

管理栄養士の指導は、糖尿病患者が効果的な食事療法を実践するために重要です。定期的な面談や栄養学級を通じて、患者の理解と実行をサポートします。

糖尿病治療には食事療法が不可欠であり、適切な食事管理によって患者は健康的な生活を送ることができます。食事療法を成功させるためには、専門医や管理栄養士との協力が欠かせません。

当院での食事療法については診察での指導のほか、栄養指導で管理栄養士に相談もできますし、毎月の糖尿病病教室も開催しています。気になる方はぜひ、下記よりお問合せください。

https://funayama.or.jp/visit/

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