こんにちは、船山内科の船山です。前回の記事「必須知識編」に続いて苦手な方も少なくない運動療法の話です。食事療法・薬物療法と並んで糖尿病の三大療法のひとつ、運動療法。
この記事では前半の必須知識に続いて運動療法の「実践ポイント」をお伝えします。毎日の生活に取り入れることが大切な運動療法の具体的な方法と、続けられるコツを紹介しますね。
【概要】
ポイント1 運動療法開始前
ポイント2 なるべく楽しく継続すること
ポイント3 制限や注意が必要な状況
高齢者の注意点
高齢者の運動療法のメリット
※ 前半記事「必須知識編」の概要
運動療法に関してよくある質問
運動療法の目的は「生活の質」をあげること
ライフスタイルの改善で糖尿病予防に?
運動療法の効果
身体活動(生活での活動、座ってする活動、運動)をイメージしよう
運動の種類別の効果とエビデンス
「有酸素運動の効果」とエビデンス
「レジスタンス運動の効果」とエビデンス
「バランスと柔軟性のトレーニング効果」とエビデンス 運動の実践方法
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では、実際にどのように運動を生活に取り入れれば良いのでしょうか。ポイントは以下の3つです。それぞれ説明していきますね。
・事前に医療者と計画を立てること
・なるべく楽しく継続すること
・危ない時と対処法を知っておくこと
運動療法の前に適切なメディカルチェックが必要です。医師による身体状況のチェックを行い、運動制限がないかなど確認することが重要です。具体的には合併症の症状や整形外科疾患、高血圧などの把握が挙げられます。一般的に軽度から中強度の運動であれば心血管疾患のスクリーニングは必要ありません。ただ普段より強度の高い運動や、心血管疾患のリスクが高い人では必要となります。
急に激しい運動を始めると続かないだけでなく、怪我のリスクも高まります。まずは、ウォーキングから始め、徐々に距離や速度を増やしていくのが良いでしょう。
レジスタンス運動も、自宅でできる簡単なものから始め徐々に負荷を高めていくと良いです。運動の効果はすぐには現れません。しかしコツコツ続けると数か月後、数年後に大きな差を生む可能性があります。
有酸素運動の具体的な実施方法
ウォーキング、サイクリング、水泳などを中強度で週に150分以上実施することが推奨されています。週に3回以上実施し、運動しない日が連続2日以上にならないように注意しましょう。
開始する際は、最初は軽度から徐々に強度を増やし、目指す運動強度は中強度とします。これは最大酸素摂取量の40から60%に相当します。運動強度の目安としては心拍数が用いられますが、心拍数を目安にすると患者にとってやや高強度になることもあります。そのため、自己判断による強度も目安としてよいとされています。
レジスタンストレーニング(筋トレ)の具体的な実施方法
週2回以上の実施が推奨されています。ウェイトマシーンを用いる場合には初めは1セット10回から5回ぐらいを目指し、それが十分にできるようになったら、1セット10回から12回、その後は1セット8から10回を目指します。これを3セット行います。主要な筋肉群に対しては8から10種目以上の実施が推奨されています。
日常生活における注意点
長時間座っていることを中断し、運動による血糖変動を比較した結果、食後の血糖変動が低下することが分かっています。日常生活での座った状況を続けるか、あるいは座ることを中断して運動することで血糖変動が改善します。
自律神経障害、空腹時血糖値が250mg/dL以上、尿中にケトン体が存在する場合などがあります。また、高齢者や虚弱な方は転倒予防を中心とした注意が必要となりますし、血管の病気を起こした方、糖尿病網膜症・腎症・神経障害などが進行している方も運動についての制限を検討することが必要となります。
高齢者は特に、運動療法に取り組む前に、個々の身体機能やバランス能力を評価することが必要です。
薬物療法に関する注意点
運動時の低血糖に注意が必要な人、特にインスリンやSU薬を使用している人は、運動前後の投薬の調整を検討する必要があります。
高齢者におけるレジスタンストレーニングは血糖値を改善し、筋力を増やし、死亡率を減らすことが期待されています。また、高齢者における運動や身体活動の影響を考慮し、フレイルやサルコペニア、ロコモティブシンドロームへの進行を予防するために個々に応じた運動プランが必要となります。
血糖値が高いと言われたり糖尿病と診断されたときの運動療法について、実践するためのポイントをまとめました。