こんにちは、船山内科の船山です。最近話題になった甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌が不足する 病気です。全身の代謝が低下し、様々な症状が現れます。放置すると、重篤な合併症を引き起こすことも。
この記事では、甲状腺機能低下症の症状や原因など基本知識、注意すべき合併症について説明します。
また、稀ではありますが甲状腺機能低下症に関連した疾患もあります。本記事では特殊な病態である、Low T3症候群(低T3症候群)/粘液水腫(myxedema)/橋本脳症(Hashimoto’s encephalopathy)/免疫関 連有害事象(iRAE)による甲状腺機能異常症についても詳しく解説します。
甲状腺機能低下症とは?
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモン(T3、T4)の分泌が不足して、全身の代謝が低下する病態です。自己 免疫疾患のひとつで、身体から自分の甲状腺を異物とみなされるので、甲状腺が攻撃され、炎症を起こして機 能が低下します。
原因
橋本病などの原発性甲状腺機能低下症が原因であることが知られています。また、下垂体・視床下部の障害に よる中枢性甲状腺機能低下症もあります。
主な症状
甲状腺機能低下症の症状は多岐にわたります。ゆっくりと進行するため、気づきにくいことも。
上記以外にも、様々な症状が出ます。
皮膚が乾燥する、カサカサする、髪の毛が抜ける、脈が遅くなる(徐脈)、記憶力低下、声がかすれる(嗄 声)、食欲低下、便秘、腹部膨満感など。
月経異常や不妊の原因となる場合も。症状が出ないまま、他の疾患の検査中に偶然発見されるケースも珍しく ありません。
慢性甲状腺炎(橋本病)の場合、抗TPO抗体や抗サイログロブリン抗体が陽性を示し、甲状腺超音波検査では 甲状腺萎縮や不均一なエコー所見がみられることがあります。
粘液水腫性昏睡は、長期間未治療または不適切に治療された甲状腺機能低下症で発症することが多いです。甲 状腺ホルモンの重度の欠乏は、全身の代謝機能に影響を与え、多臓器系にわたる障害を引き起こします。脳血 流の低下、酸素およびブドウ糖の消費低下、体温調節障害などが臨床症状に関与します。
本疾患の3徴候
典型的な患者さんは高齢女性です。慢性的な甲状腺機能低下症の徴候を伴い、特に冬季に発症することが多い です。
特に進行すると粘液水腫性昏睡(myxedema coma)という致命的な状態となり、迅速な甲状腺ホルモンの 静脈内投与、副腎不全を考慮したステロイド補充、ICUでの厳密な管理が求められます。非常にまれな疾患で すが、致死的な経過となりうるためこの病名が疑われた場合には緊急で対応します。
原因:
橋本脳症は、甲状腺自己免疫疾患(橋本病)に伴う希少な自己免疫性脳症です。意識状態の異常などの精査で 明らかになることのある診断が難しい病態です。
主な症状:
検査と診断:
治療:
近年、がん免疫療法(免疫チェックポイント阻害剤)の普及により、免疫関連有害事象(iRAE)が増加してい ます。その中でも、甲状腺機能異常は比較的頻度は高いです。
特徴:
著明な甲状腺機能低下症では血清TSH値が100μIU/mlを超える場合もあります。甲状腺ホルモンの補充量が 通常の症例よりも多量になっている状態です。このようなケースでは、過剰投与による心不全や循環器系への 負担を防ぐため、甲状腺ホルモンの投与経験が豊富な医療者による慎重かつ専門的な管理が必要となります。
甲状腺機能低下症の多くは橋本病です。ただ、その他にも頻度は低いですが、Low T3症候群、粘液水腫、橋 本脳症、iRAEによる甲状腺機能異常など、多様な病態があります。
特に粘液水腫や橋本脳症は迅速な治療が求められる重篤な疾患です。疑われる症状がある場合は速やかな専門 医の受診をお勧めします。
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